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手彫り工房ブログ

手彫り工房のオフィシャルブログです。金属彫ってます。彫ってます。

マス留めをしてみよう。 彫金教室

2023
08
こんにちは。

こちらは手彫り工房の彫金教室です。
バックナンバーはコチラから


マス留めとは


マス留めはマスの名の通り、
正方形の枠が並んでいる留めです。
ハーフエタニティ
周囲から光も入りやすく、
ジュエリーでメレ(小さな宝石)を留める方法として一般的です。

下準備


下準備は連縄留めとほぼ同じです。
強いて気を付けることと言えば、
リングに留める場合は下穴の幅をリング幅とできるだけ同じにすることですね。
連縄留めなどの記事を読んでいない方はバックナンバーをご覧下さい。

連縄留めは枠が曲線なので
穴と穴の間が少し広くなってしまっても問題ないのですが、
マス留めでは枠が長方形になってしまいます。
穴の間隔はしっかり気をつかっていきましょう。

皿もみも連縄留めと同じく最初は目印程度でもOKです。
ただ、銅以外なら最初からキッチリと皿もみするのもアリですね。
銅はどうしてもバリがでるので、
枠を彫った後にキッチリ皿もみするのが効率的だと思われます。

マス枠を彫って留める


皿もみが終わったら、枠を彫っていきましょう。
今回ここでは板に留めていきますが、リングでもOKです。

まずは図で説明
マス留め1

↓赤線深:平タガネのカドで爪になる所を迂回するように彫っていきます。
      爪部分を彫り終わるまでは赤線に集中。
マス留め2


↓青線:同時に青色部分も彫っていきます。
     赤線の爪を彫り終わったら、枠の直線に強めに集中。
マス留め3a
マス留め4

もう片方の爪まで来たら、
滑らかかつグッと刃を急上昇させて彫り終えます。
マス留め5

図だけでは動きのイメージがつかみにくいかもしれないので、
映像もどうぞ。
画面見て撮影しながら彫ったのもあって盛大にミスってますが、
動きの感じは分かってもらえるかなと。

ミスポイントはまっすぐすべきところがなってないなどもありますが、
致命的なところは爪部分が小さすぎることですね。
多少ガタついたりバリがでて汚くなっても、ある程度リカバリー可能です。
↓これだけガタガタになっていても
マス留めb (1)
↓直しつつ隣合う枠がしっかりしてればまっすぐになります。
マス留めb (2)
↓ただ爪が小さすぎてあんまりちゃんと留まってないです。
 爪が小さいと採光が良くなりますが、強度面は不安。
 最初は爪大きめのほうがオススメですね。
マス留めb (3)
彫り留め全般に言えることですが、
爪を切り飛ばしたり小さくし過ぎてしまうとリカバリーが非常に難しくなります。
マス留めは爪が小さいことに加えて爪以外の部分が一段下がっているため、
爪を切り飛ばしやすい留めと言えるでしょう。
ですので、爪立てした後のタガネの扱いは細心の注意を払ってください。


爪小さすぎプラスできばえがイマイチすぎるということで、
次は爪大きめでマシな出来栄えの見本もご覧ください。
↓これだけ爪部分が残っていると、直径1㎜の宝石ではかなり大きめです。
 2~3㎜の宝石だとちょうど良いかも。
マス留めc (1)
↓再度皿もみ
マス留めc (2)
↓爪立てして
マス留めc (3)
↓平タガネでキレイにして、丸めて留めます。ナナコは13番でした。
マス留めc (4)
マス留めc (5)
正直に言うとちょっと何かもう面倒臭くて雑になっていますが、
これくらいを連続して彫れればマス留めができるようになったと言って良いと思います。
最初はこれくらいの爪の大きさでも良いですが、
慣れてきたらドンドン爪を小さくして見て下さい。
そちらの方が見栄えが良いです。


今回、爪立てに使用している毛彫りタガネの角度は90度よりかなり鋭いです。
そのため彫った時にバリや彫り残しが出やすい上、彫った線がしっかり出過ぎてしまっています。
キレイにするのに手間と時間がかかり、爪切り飛ばしリスクもあるので、
量をこなしていくなら専用のタガネは作りたい所ですね。

↓全体的にバリ出てしまっていますが、一部分紹介
マス留めc (3)
マス留めc (3)2
銅なので何は無くとも多少のバリはでますが、
爪部分の彫り残しが多すぎてバリがかなりしっかり出てますね。
爪の近くのバリ取りは特に気をつかいます。


↓彫った線が出過ぎている。
 マス留めc (4)
マス留めc (4)2
毛彫りの線が強く出過ぎると、少し不格好です。
マス留めの中に毛彫り4点留めしてる感が出てしまって
四角感といいますか、マス感といいいますか・・・が損なわれている感じです。

ただし、枠が小さい場合は
対角線として分かりやすくなるため逆にこれくらい出ていた方が良い感じです。
私は幅2㎜のリングならしっかり彫った跡出していきますね。
実は今回、
色々わかりやすくするため枠を大きめに彫っています。一辺約3㎜です。
直径1㎜の宝石に3㎜枠だと余剰部分が大きく
毛彫りの線が気になってくるというわけですね。
このように宝石の大きさや枠の大きさでも最適解的なものは変わってくるので、
その都度しっかり考えていきましょう。
2㎜幅のリングでやっている方は
ここに関しては気にならないと思います。


効率的なマス留めと専用のタガネ


さて、量をこなすならタガネを作るべきみたいなことを先述しました。
マス留めは何度も同じ彫りをたくさん繰り返すので、
効率化が図られております。
マス留め6 (2)
製作するタガネは
留める宝石の直径と同じ幅の平タガネと
角度90度の毛彫りタガネです。

やり方はこちらの方が簡単かもしれません。
幅ピッタリ平タガネで4方向、皿もみに向かって切り落とすように彫り、
90度線彫りタガネで爪立てして留めるという流れ。
4方向切り落としも手早く、
90度の線彫りタガネで枠の角が直角になってくれてバリも出にくいので
非常に効率的です。
専用のタガネを作らなければなりませんが、
数こなすならこちらの方が良いでしょう。

ただ、技術の発展性からすると、
こちらの効率的な彫りは良くないのかなぁと思い後回しにしました。
例えば、正方形のマス留めならできるけど、
5角形の枠彫りたいときに通じないというのも如何なものかと。
さっさとマス留めできるようになりたいなら、
先に専用タガネ作ってやっていくのもアリです。


最後に



毛彫り4点留めと連縄留めができたなら
マス留めも形にはなると思います。
少なくとも手も足も出ないということは無いでしょう。
後は枠と枠の境目がしっかり直線になっているかとか、
爪の大きさは適当かとか、
各々の美的感覚に従っていけば上手になっていくはずです。
それでも不安ならプロの作った完成品と見比べるのも良いですね。
ネットで画像は出てきますし、
実物なら宝石店は言わずもがなリサイクルショップなんかにも意外と置いていたりします。

自分が作っていると、
アクセサリーも色々細かい点に気づけて見方が変わってきます。
例えば、昔はただ、わぁ~キレイ、だったモノが、
今ではココはこういう彫りをしていて爪の大きさはこれくらいで~
とかなってくることでしょう。
解像度が上がった分、素直さが減るというか・・・
まぁ前者の方が楽しく、後者の方が面白味があるというかんじです。


彫金教室もようやくここまで来て人心地です。
もう後は好きなように彫ってそれを記事にしていけばいいかなぁと考えております。
何か思いついたらまた追加していくかもしれませんけどもね。

今2023年1月で彫金教室最初の記事が2016年5月だから、
7年弱といったところでしょうか。
板切る所から始めてマス留めまで。思えば遠くまで来たものだなぁ。
分かりやすく書けた自信はないけれど
限られた気力体力で出来るだけのことはしたよね
っていう自負はあります。
気を付けていたのは体系的であることでした。
順繰りに読んで実践できれば基礎ができて
各々そっから好きに伸ばしていけるよねっていう。
まぁそんな偉そうに書きつつも、私もまだまだ途上なのですが。
あんまりね、体系的につながりを意識してくれる書き手がいない感じだったんですよね。
なら自分が書くしかないかぁ、と。

彫金独学で、ネットに情報落ちてない(涙)という方の
背中を少しでも押せたことを願って。

それでは。