ドリル刃の成形 彫金教室
2021
04
こんにちは。
こちらは手彫り工房の彫金教室です。
バックナンバーはコチラから
今回はドリル刃の成形をやっていきます。
厳密に言えば大きな研ぎなのですが、
研ぎと成形につきましては前回の「ドリル刃の研ぎ」をご覧ください。
手の動かし方は前回の記事とほぼ同じです。
回転させ、少し倒しながら成形します。
前へ出すのはリューターが勝手に回転するので必要ありませんが、
自然と前に出てしまっても問題ありません。
難しくなる点は置いてから角度を確認できない点です。
砥石では石の上にドリルを置いて角度を確認できましたが、
回転しているリューターではそうもいきません。
そのため、前回の研ぎの動きがしっかりできるようになってから成形しましょう。
使用するリュータービットは
鉄やステンレス、超硬でも削れるダイヤモンドディスクがオススメです。

普通のグラインダーでも成形できるのですが、
回転が速すぎるとドリルに別方向の力が強めにかかります。
小さいドリルを成形するなら、
回転半径も小さく、回転速度に融通の利く
リューターはかなり有用といえるでしょう。
ドリルがダイヤモンドディスクに接した瞬間に
成形の成否は8割決まっていると言っても過言ではないでしょう。
はじめの角度をどうするか、というのは非常に大切です。
当たり前ですが、平面のダイヤモンドディスクに対して
ドリルをどの向きにどれだけ倒すかを決めることで
角度が決まります。
どのようにドリルを倒したらどのように削れ方が変わるのか、
その想像ができるように意識してやっていきましょう。
もちろん何となくやり続けてもそのうちできるようにはなりますが、
私の独学で良ければコツや考え方を紹介させてもらいましょう。
・・・・本当に完全独学なので、
異論がありましたらそちらに従ってくれて良いですからね。

切刃はそのままの意味で、穴を開けたい金属を切る刃となる部分のことです。
この切刃を基準にして
倒す向きが「横・水平方向」か「垂直方向」かを意識しましょう。
この2方向で削れ方が変わってきます。
横・水平方向にドリルを倒すと主に横から見た角度が変わります。
↓横から見た角度とは

実際にダイヤモンドディスクで削るときは
切刃を手前の見える位置に置きたくなると思うので、
以下のようになるハズ。

横・水平方向に倒せば倒すほど角度は小さくなっていきます。

私の感覚ですが、穴を開ける(貫通させる)なら角度は110~120度くらいが良い感じです。
ひとまずの感覚としては90度より鈍角にしようくらいの心がけで大丈夫でしょう。
ちなみに、90度くらいでも穴を開けられはします。
なんなら、用途によっては90度より小さくすることもありますからね。
逆に120度以上でも開きます。
真鍮など固い金属や薄い板であればちょっと角度大きめが便利ですね。
基本的にいろいろ使いやすい角度が110~120度なのです。
すなわち、最初に成形するにあたって横からの角度で気にすべきなのは
左右対称にすることでしょう。
あんまりにも左右非対称だと削れませんからね。
なお、少し左右非対称だと片側の切刃だけ機能するようになります。
キッチリ左右対称にするのは実は難しい技術です。
なにせ、両方いっぺんではなく片側ずつ成形するわけですからね。
寸分の狂いなく両側同じ角度にするって本当に難しいです。
なのではじめは片側の切刃だけでも機能して、ドリルとして使えさえすれば十分です。
ちなみに、両側の切刃が機能していると
らせん状の削りクズが穴あけ時に2本出てきます。
1本だけなら片側のみ機能しています。
ドリルを上から見るとこんな風になっています。

切刃の位置はココ

そして見るべき目安とするのは切刃と中央の線の角度

ドリルの刃から逆側の刃をつなぐ線、この角度です。
絶対に90度より大きくしましょう。
これもあくまでも私の感覚ですが、ベストは140度くらいですかね。
細かく説明すると頭の中をこんがらがらせてしまうかもしれないのでアレですが、
ここの角度が大きいほど基本的に刃が外を向きます。
90度以下になると刃が内側を向き、絶対に穴が開かないドリルになります。
逆に角度が大きすぎると刃が金属に引っかかるので、
ある程度穴を開けたところで進まなくなります。
ドリル刃が引っかかると穴を開けようとした金属ごと回転するので、
ちょっとだけ危険です。
その際は冷静にリューターの電源を切りましょう。
要するに、上から見た角度が大きくなるほど刃は外向きということですね。
そしてこの角度を左右するのが
最初に書いた2つの角度の内の一つ「切刃に対して垂直方向」に倒すことです。

ちょっと分かりにくい場合は↓と見比べると分かりやすいかも?

切刃に対して垂直に倒せば倒すほど、
上から見た角度は大きくなります。


成形後はドリルの角度をしっかり観察して
もうすこしドリルを倒して削ろう、もっと立てて成形した方がいいな、など
振り返りをしていきましょう。
はじめの内は失敗しても振り返って修正していけば、
上達はグっと速くなるはずです。
ここまで書いてきたのはダイヤモンドディスクにドリルを置く時のはじめの角度です。
最後に、置いてからの動きの意味も一応書いておきます。
研ぎの方でも書いた動かし方
↓「前に出し、回転させ、少し倒しながら」のやつです。

回転させ、は何となくわかりますよね。
ドリル自体が2重らせんのようになっている以上、
それに沿わせれば自然と回転します。
「少し倒しながら」は簡単に言うと切刃を一番高くするためです。

だんだん倒していく動きをすると
スタートの切刃が一番高くなり、そこからだんだん低くなります。
切刃が一番高くないと、
切刃以外の高い所が邪魔になって
刃が金属に当たらなくなります。
刃が金属に当たらなくなれば、当然削れなくて穴も開きません。
少し切刃が高ければOKなので、
「たくさん倒しながら」ではなく「少し倒しながら」なのです。
ここまで如何だったでしょうか?
イメージのしづらい所、よくわからない所もあったかもしれません。
ただ、研ぎさえできれば成形はそのうちできるようになるハズ。
なぜなら、動きはほぼ変わらないためです。
逆に、ひとまず技術を身につけるだけなら
角度のことを色々考えるのは回り道かもしれません。
しかし、用途に合わせて成形したり他の技術に応用しやすかったりと
思わぬメリットを得ることがあります。
こう、技術の伸びしろというか拡張性というか・・・そんな感じです。
もし今よくわからなくても
動きをマネして成形できるようになった後に見てもらえると
実感と共に理解しやすくなっているかもしれません。
要するに
考え方→技術でも、技術→考え方でも
どちらの順番でもOKなので
今わからなくても後でぜひまた見に来てくださいね、ということですね。
そして、考え方が分かって技術も身につけたという方は
彫金の専門書を見てみると面白いかもしれません。
実はドリルの角度は他にも色々ありまして、
ここで紹介したのは最低限だったたりします。
私は使えればいいや、というタイプで
他の色々な角度まで考えてはいないですが、
こだわりのでてきた方はぜひ。
次回は直径1㎜未満の細いドリルについてちょっと書いていこうかなと思っております。
それでは。
こちらは手彫り工房の彫金教室です。
バックナンバーはコチラから
今回はドリル刃の成形をやっていきます。
厳密に言えば大きな研ぎなのですが、
研ぎと成形につきましては前回の「ドリル刃の研ぎ」をご覧ください。
手の動かし方があやふやなら、前回の復習を
手の動かし方は前回の記事とほぼ同じです。
回転させ、少し倒しながら成形します。
前へ出すのはリューターが勝手に回転するので必要ありませんが、
自然と前に出てしまっても問題ありません。
難しくなる点は置いてから角度を確認できない点です。
砥石では石の上にドリルを置いて角度を確認できましたが、
回転しているリューターではそうもいきません。
そのため、前回の研ぎの動きがしっかりできるようになってから成形しましょう。
リューターのダイヤモンドディスク
使用するリュータービットは
鉄やステンレス、超硬でも削れるダイヤモンドディスクがオススメです。

普通のグラインダーでも成形できるのですが、
回転が速すぎるとドリルに別方向の力が強めにかかります。
小さいドリルを成形するなら、
回転半径も小さく、回転速度に融通の利く
リューターはかなり有用といえるでしょう。
はじめの角度
ドリルがダイヤモンドディスクに接した瞬間に
成形の成否は8割決まっていると言っても過言ではないでしょう。
はじめの角度をどうするか、というのは非常に大切です。
当たり前ですが、平面のダイヤモンドディスクに対して
ドリルをどの向きにどれだけ倒すかを決めることで
角度が決まります。
どのようにドリルを倒したらどのように削れ方が変わるのか、
その想像ができるように意識してやっていきましょう。
もちろん何となくやり続けてもそのうちできるようにはなりますが、
私の独学で良ければコツや考え方を紹介させてもらいましょう。
・・・・本当に完全独学なので、
異論がありましたらそちらに従ってくれて良いですからね。

切刃はそのままの意味で、穴を開けたい金属を切る刃となる部分のことです。
この切刃を基準にして
倒す向きが「横・水平方向」か「垂直方向」かを意識しましょう。
この2方向で削れ方が変わってきます。
「横・水平方向」は横から見た角度
横・水平方向にドリルを倒すと主に横から見た角度が変わります。
↓横から見た角度とは

実際にダイヤモンドディスクで削るときは
切刃を手前の見える位置に置きたくなると思うので、
以下のようになるハズ。

横・水平方向に倒せば倒すほど角度は小さくなっていきます。

私の感覚ですが、穴を開ける(貫通させる)なら角度は110~120度くらいが良い感じです。
ひとまずの感覚としては90度より鈍角にしようくらいの心がけで大丈夫でしょう。
ちなみに、90度くらいでも穴を開けられはします。
なんなら、用途によっては90度より小さくすることもありますからね。
逆に120度以上でも開きます。
真鍮など固い金属や薄い板であればちょっと角度大きめが便利ですね。
基本的にいろいろ使いやすい角度が110~120度なのです。
すなわち、最初に成形するにあたって横からの角度で気にすべきなのは
左右対称にすることでしょう。
あんまりにも左右非対称だと削れませんからね。
なお、少し左右非対称だと片側の切刃だけ機能するようになります。
キッチリ左右対称にするのは実は難しい技術です。
なにせ、両方いっぺんではなく片側ずつ成形するわけですからね。
寸分の狂いなく両側同じ角度にするって本当に難しいです。
なのではじめは片側の切刃だけでも機能して、ドリルとして使えさえすれば十分です。
ちなみに、両側の切刃が機能していると
らせん状の削りクズが穴あけ時に2本出てきます。
1本だけなら片側のみ機能しています。
次は上から見た角度
ドリルを上から見るとこんな風になっています。

切刃の位置はココ

そして見るべき目安とするのは切刃と中央の線の角度

ドリルの刃から逆側の刃をつなぐ線、この角度です。
絶対に90度より大きくしましょう。
これもあくまでも私の感覚ですが、ベストは140度くらいですかね。
細かく説明すると頭の中をこんがらがらせてしまうかもしれないのでアレですが、
ここの角度が大きいほど基本的に刃が外を向きます。
90度以下になると刃が内側を向き、絶対に穴が開かないドリルになります。
逆に角度が大きすぎると刃が金属に引っかかるので、
ある程度穴を開けたところで進まなくなります。
ドリル刃が引っかかると穴を開けようとした金属ごと回転するので、
ちょっとだけ危険です。
その際は冷静にリューターの電源を切りましょう。
要するに、上から見た角度が大きくなるほど刃は外向きということですね。
そしてこの角度を左右するのが
最初に書いた2つの角度の内の一つ「切刃に対して垂直方向」に倒すことです。

ちょっと分かりにくい場合は↓と見比べると分かりやすいかも?

切刃に対して垂直に倒せば倒すほど、
上から見た角度は大きくなります。


成形後はドリルの角度をしっかり観察して
もうすこしドリルを倒して削ろう、もっと立てて成形した方がいいな、など
振り返りをしていきましょう。
はじめの内は失敗しても振り返って修正していけば、
上達はグっと速くなるはずです。
動きの意味
ここまで書いてきたのはダイヤモンドディスクにドリルを置く時のはじめの角度です。
最後に、置いてからの動きの意味も一応書いておきます。
研ぎの方でも書いた動かし方
↓「前に出し、回転させ、少し倒しながら」のやつです。

回転させ、は何となくわかりますよね。
ドリル自体が2重らせんのようになっている以上、
それに沿わせれば自然と回転します。
「少し倒しながら」は簡単に言うと切刃を一番高くするためです。

だんだん倒していく動きをすると
スタートの切刃が一番高くなり、そこからだんだん低くなります。
切刃が一番高くないと、
切刃以外の高い所が邪魔になって
刃が金属に当たらなくなります。
刃が金属に当たらなくなれば、当然削れなくて穴も開きません。
少し切刃が高ければOKなので、
「たくさん倒しながら」ではなく「少し倒しながら」なのです。
ここまで如何だったでしょうか?
イメージのしづらい所、よくわからない所もあったかもしれません。
ただ、研ぎさえできれば成形はそのうちできるようになるハズ。
なぜなら、動きはほぼ変わらないためです。
逆に、ひとまず技術を身につけるだけなら
角度のことを色々考えるのは回り道かもしれません。
しかし、用途に合わせて成形したり他の技術に応用しやすかったりと
思わぬメリットを得ることがあります。
こう、技術の伸びしろというか拡張性というか・・・そんな感じです。
もし今よくわからなくても
動きをマネして成形できるようになった後に見てもらえると
実感と共に理解しやすくなっているかもしれません。
要するに
考え方→技術でも、技術→考え方でも
どちらの順番でもOKなので
今わからなくても後でぜひまた見に来てくださいね、ということですね。
そして、考え方が分かって技術も身につけたという方は
彫金の専門書を見てみると面白いかもしれません。
実はドリルの角度は他にも色々ありまして、
ここで紹介したのは最低限だったたりします。
私は使えればいいや、というタイプで
他の色々な角度まで考えてはいないですが、
こだわりのでてきた方はぜひ。
次回は直径1㎜未満の細いドリルについてちょっと書いていこうかなと思っております。
それでは。