包丁の研ぎ ~ドリル刃研ぎの前段階となる技術として~
2021
17
こんにちは。
こちらは手彫り工房の彫金教室です。
バックナンバーはコチラから
ちょっとドリル刃の研ぎから逸れるようではありますが、包丁研ぎからやっていきます。
包丁研ぎは調べれば情報がたくさん出てきますし、
私も前に記事にしたことはあったりします。
だから書かなくても良いかな、と当初思っていました。
しかし、少し調べるうちにあまりに数字が具体的すぎる記述が多いことに気づきました。
包丁を研ぐには○○度に傾けて~、親指分浮かせて~
みたいに具体的な数字ややり方だけをトレースしても
前段階の技術となり得ない場合があるのです。
具体的なのは当然わかりやすくて良く、否定するわけではありません。
しかし、今回必要とされるのは角度を感じるという
五感や体感やらを磨く方法なのです。
感覚無しに方法論だけでは前段階の技術足りえない。
もっと応用の利く柔軟な技でなければ、
体系的な技術とならずにかえって遠回りになるかもしれない。
そのような懸念から、一応私なりの身につけ方を書いておくことにしました。
ドリルを研ぐ前に包丁を研ぐという何とも迂遠なことをやっていますが、
角度の感覚とかちょっと何言ってるかわからない、という方はぜひ読んでいってください。
普段お使いの包丁と砥石があればOK。
本記事では片刃を使っていますが、両刃でも大丈夫です。
砥石と水を入れる汚れても良い容器、あとは滑り止めもあれば完璧です。
私は100均の滑り止め敷いてます。
↓基本的には中砥
↓楽にやりたいor半年に一度しか研がないとかなら荒砥もあり
荒砥は粒子が大きく一度動かしただけでたくさん削れます。
たまに研ぐとたくさん削る必要がでてきますので、
あまり研がないよという方は荒砥が良いのかもしれません。
でも研いだところがザラつくので、中砥を使わないなら
#600くらいのあまり荒くない荒砥が良いでしょう。
ただ、面倒でなければできるだけ荒砥の後は中砥で整えてくださいね。
私は30分くらい漬けますが、10分程度でもOKです。

私の使う砥石は表面が削れて曲面になっていますが、
この状態で使うことはオススメしません。
角度の保ったり調節したりする難易度が高くなるためです。
コンクリなどに擦り付けて削ると平らに戻せるので、
通常は使用後に削って平らにします。

私は持っていないが、
砥石を平らにする「面直し」のための道具もあります。
最近のは砥石にもなるようなので、
砥石を持っていないならこちらを購入しても良いかもしれません。
私はリングを彫っているおかげか
曲面において一定角度を保つということが多少できるので、
角度感覚の訓練のためにも曲面のまま研いでいます。
リングに一定の深さで直線の線彫りができるなら、
曲面での研ぎもやってみるとおもしろいですよ。
あと、平らに削るの面倒くさいというのももちろんありますね。
でも、角度がキツくなってきたのでそろそろ平らにした方が良いかもしれません。
2.角度を確かめる。
ここ間違えると全て台無しになるので丁寧にいきましょう。
まず、切れない状態では刃が摩耗して丸くなっています。
↓青い部分。刃が摩耗して丸くなっている図

基本は刃の元の角度を変えずに研いで鋭くします。
となると、元の角度を手や指で感じ取ることが重要になりますよね。
角度を確かめるためにまずは刃を砥石にぎゅっと押し付けてみましょう。
↓赤色部分を指で砥石に押し付け、元の角度をしっかり保持しましょう。

↓実際の押さえ方は両手でしっかり指4本ずつがオススメ


このようにしっかり押さえれば
これくらいの角度かな?というのがわかるはずです。
↓横から見た写真

しかし、実際に研ぐときは包丁を動かさなければなりません。
そして、動くときの抵抗のせいで、せっかく確かめた角度は変化してしまいします。
変わった時にすぐ元の角度に戻せるように
角度を変えて戻してを何回か繰り返すと感覚がつかめます。
↓押さえているのを後ろから撮ったもの。親指を上下に動かして角度を変えてみよう。

おかしな角度になったときに気づいて即応できれば失敗はほぼなくなります。
角度の把握と変化をしっかり意識できたら次の段階に進んでください。
なお、ここが一番大事なのでしっかり丁寧に感覚をつかんでください。
角度はしっかり確認できたでしょうか?
そうしたら、次はゆっくり動かして研いでいきましょう。
私は押し研ぎ派です。自分の近くから遠くへ押し出すように研ぎます。
引いて研ぐのが好きな方もいるので、慣れたらやってみると良いでしょう。
両手全体で包丁を抑えたままでも動かせますが、
指1,2本ほど柄に引っ掛けて研ぐと安定して良い感じです。
↓赤丸の部分、薬指と小指を柄に引っ掛けている。

↓先端の方は片手で柄を持ち、もう片方でしっかり押さえます。
どうでもいいですが、この写真はアゴと鎖骨でカメラを支えて撮りました。・・・疲れた

先端は跳ねやすいので、
ちょっと怖いですが刃の本当にすぐ近くを押さえてあげましょう。
最初は亀の歩みくらい本当にゆっくりで良いです。
ここで主眼を置くべきは研ぐことそのものではなく、
角度を維持することです。
動かせば力が別方向からかかり角度が変化してしまいます。
それを適切な力加減で押さえて角度を維持し、
変化してしまったら修正してください。
動かしきって端までいったら、
また戻って丁寧に角度を確かめてくださいね。
繰り返しますが、ここでは研ぐことは二の次です。
角度を維持し、変わってしまったら修正、
これがしっかりできるようになったら次の段階へ行きましょう。
いよいよ本格的に研ぎます。
といっても、少しずつ動かす速度を上げていくだけです。
ある程度速くしたところで
角度が変化の修正がしづらかったり維持が適当になってしまうはずです。
角度の維持が難しくなったら速度を落とし、
自分のちょうどよい速度で研いでいきましょう。
研いでいくと泥のような研ぎ汁がでてきます。
これは研磨剤の役割を果たしますので、研いでいる最中は洗い流さなくて良いです。
とはいえ特段に気を使う必要もなく、
包丁が渇いて研ぎにくくなってきたら水をかけても大丈夫です。

研ぐ順番は私は先っぽのほうからやっていますが、
別に根本からでもかまいません。
速さにかかわらず10回ほど研いだら、研ぐ場所を変えていきましょう。
研ぐ場所は少し重なるようにして全体を研いでいってください。
1年以上研いでいない包丁なら先から根本まで全体10回研ぐを4セット、
すなわち合計全体40回ほどは研がないと切れないかもしれません。
なお、月一で研ぐ場合は、全体2セット(20回)も研げば十分ですし、
週一ならもっと少なくて良いです。
なお両刃なら
全体10回4セット→全体裏表5回ずつを4セットというように
適宜回数を調整してやってみてください。
研ぎの止め時って意外と難しいです。
研いでいるときはちゃんと切れるようになっているかは分かりませんからね。
私が思いつくのは3通りです。
一つ目は
親指の爪をほんの軽く撫でるように切ってみて
引っかかりがあるような感じだったらOKというもの。
ただ爪は傷つきます。
二つ目は私独自の方法なので一般的ではないですが、
刃を親指の腹で軽く横にはじいて切れそうな感じがするか確かめるもの。
指紋に刃をひっかける感覚が近いかも。

切れなくなっている包丁は刃が丸くなっており、若干滑らかな触覚です。
切れる刃物は軽く触っただけで
引っかかりがあり、痛覚を刺激し、身の内にスッと入り込んできそうな怖気を感じます。
あるいは、指紋が引っかかって削られるような感じですかね。
私的には簡単に確かめられるのでオススメです。
ですが、タガネづくりの経験が多分に生かされた結果できるようになっていた気もしますし、
怪我しても責任は取れません。
やってみるにしても、本当にかる~くにしてくださいね。
三つ目は素直に何か切ってみること。
野菜の捨てるところなど、
普段切るようなものを適当に切ってみると違いが一番わかりやすいです。
ただ順番を入れ替えて、「手順6のバリ取り」を先にやった方が良いでしょう。
バリが変な風に取れたり曲がったりすると切れ味に影響します。
そのため、もし追加で研ぐ必要がでてくると
バリ取りをもう一度やらなければいけないので面倒だったりします。
またそのまま試すと切ったものやまな板が汚れますし、
包丁を洗ったら洗ったでもう一度研ぐ必要があったときに二度手間になります。
と、色々面倒ですが、一番安全確実なのでオススメではあります。
4つ目 目視
ちょっと難しいです。
前に人に説明したことがあるのですが、よくわからないとのことでした。
刃そのものが研げていない場合、
オモテ面からよく見ると刃が研ぐ前の色になっています。
とはいえ刃付近の0.1㎜とかなので見えにくいです。
他にも刃そのものに光を当てて
柔らかく光ったり光の線が太かったら研げていない、とか
裏面にバリが出ているかどうか、とか
そんなところをよく見ています。
↓研ぎの過程です。

赤い部分は砥石が当たって研げている部分。
絵の真ん中で研ぎの途中だと、摩耗して丸くなった青い部分がまだ残っています。
青い摩耗した部分は砥石が当たっていないため、色もほぼ研ぐ前のまま。
つまり、研げていない暗い色の部分が刃付近にあれば
まだ研ぎは不十分といえるわけです。
↓一回研いだだけ。
赤矢印の区間に注目すると刃付近は地の鉄の色が出ておらず、研げていないのが分かる。

↓3回くらい研いだもの。刃付近0.1㎜以下だが、暗い色の部分が残っている。
よってこれもまだ研げていない。

上の2枚の写真はアップにしているため、見やすいです。
実際はもう少し見にくいです。
実際に目視してみてわからなかったら別の方法にしましょう。
なお、刃そのものを照らして光り方で判断するということもやってますが、
こちらは上手に写真が取れませんでした。

赤矢印のところが光り方が違うんですが、分かります?
・・・わからないですよね。
これはさっきと違って実際に目視した方がわかりやすいです。
刃が丸くなっている所は柔らかに光り、
欠けている所はキラっと大きめに光ります。
しっかり研げている所は光を反射する面積が無いので、あまり光りません。
先ほどもちらっと書きましたが、バリが出ているかどうかで判断する場合もあります。
バリとは
刃にくっついたままになっている金属クズで、キザギザしております。
オモテ面を研いだ後に裏面で発見できます。
一応刃に砥石が当たっている証明にはなるのですが、
バリがあるからといって必ずしも切れるわけではないという・・・
なんなら押し研ぎで丁度良い加減で研ぎ終わればあまりバリがでないことも多いという・・・
意外とアテにならない指標ではあります。
これについては最後にちょっと書いておきます。
片刃では先にも説明したバリ取りをする必要があります。
今回は押して研いでいるので大きなバリは出にくいですが、
目に見えなくともわずかに出ていることが多いです。
なお両刃でもバリが出ていることはあるので、見つけたらしっかり取っておきましょう。
バリの出る片刃の裏面は通常ほぼ平らです。
そのため、バリ取りは裏面を砥石に密着させて
刃を砥石に擦り付けるような感じで動かせばOKです。
刃に付いたゴミを砥石に擦り付ける感覚で、
研ぐよりも押さえる力は弱くします。
動かす回数も精々2,3回といったところ。
バリが取れていれば1回でも構いません。
↓私は親指で押さえて引いて動かしバリ取りしております。
実は裏すきが浅くなっている関係で少し両刃気味にしており、
裏面の研ぎにしては少し角度が大きいです。

このバリ取りは裏面の研ぎも兼ねております。
逆に言えば、片刃の裏面の研ぎはこれくらいささやかで良いのです。
包丁には「裏すき」と呼ばれるくぼみがあり、
裏面をしっかり研ぐとこのくぼみがなくなってしまいます。
そのため、バリ取りと兼ねるくらいで良いということですね。
もちろんオモテ面がしっかり研げていればちゃんと切れます。
研ぎ終わったら包丁や砥石はしっかり洗いましょう。
包丁は錆びないように水分をふき取り、
砥石は自然乾燥させます。
生乾きでしまうと砥石にカビが生えることもあるので、
くれぐれもご注意ください。
先ほどバリが出ていても切れないパターンがあると書きました。
↓研いでいる最中に角度が大きくなってしまうと、
むしろ刃は丸くなってしまうという絵です。

鋭い部分を角度大きくしながら削っているのですから丸くなるのは当然です。
角度的には、木材の角を落とす時と同じようなことをしています。
つまり残念ながら、逆効果です。
このようにどれだけ頑張って研いでも包丁が切れるどころかナマクラになる場合、
多くは角度をしっかり維持できていないことが原因です。
なお、このパターンでも砥石が刃に当たっているのでバリはでます。
前述したバリは出ているけど切れないのはコレです。
刃を削って丸くしているので、バリがでるのです。
心当たりのある方は、
しっかり押さえて角度を確かめること
を丁寧にやれば研げるようになるハズです。
ですので、失敗してもめげずに参りましょう。
最後に、使用後の砥石は洗ってからしっかり乾かしましょう。
私は前に半乾きでしまったら、カビが生えました。
次回からはさすがにドリル刃を研いでいけると思います。・・・たぶん。
それでは。
こちらは手彫り工房の彫金教室です。
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角度を感じる。~前段階となる技術~
ちょっとドリル刃の研ぎから逸れるようではありますが、包丁研ぎからやっていきます。
包丁研ぎは調べれば情報がたくさん出てきますし、
私も前に記事にしたことはあったりします。
だから書かなくても良いかな、と当初思っていました。
しかし、少し調べるうちにあまりに数字が具体的すぎる記述が多いことに気づきました。
包丁を研ぐには○○度に傾けて~、親指分浮かせて~
みたいに具体的な数字ややり方だけをトレースしても
前段階の技術となり得ない場合があるのです。
具体的なのは当然わかりやすくて良く、否定するわけではありません。
しかし、今回必要とされるのは角度を感じるという
五感や体感やらを磨く方法なのです。
感覚無しに方法論だけでは前段階の技術足りえない。
もっと応用の利く柔軟な技でなければ、
体系的な技術とならずにかえって遠回りになるかもしれない。
そのような懸念から、一応私なりの身につけ方を書いておくことにしました。
ドリルを研ぐ前に包丁を研ぐという何とも迂遠なことをやっていますが、
角度の感覚とかちょっと何言ってるかわからない、という方はぜひ読んでいってください。
0.道具を用意する
普段お使いの包丁と砥石があればOK。
本記事では片刃を使っていますが、両刃でも大丈夫です。
砥石と水を入れる汚れても良い容器、あとは滑り止めもあれば完璧です。
私は100均の滑り止め敷いてます。
↓基本的には中砥
↓楽にやりたいor半年に一度しか研がないとかなら荒砥もあり
荒砥は粒子が大きく一度動かしただけでたくさん削れます。
たまに研ぐとたくさん削る必要がでてきますので、
あまり研がないよという方は荒砥が良いのかもしれません。
でも研いだところがザラつくので、中砥を使わないなら
#600くらいのあまり荒くない荒砥が良いでしょう。
ただ、面倒でなければできるだけ荒砥の後は中砥で整えてくださいね。
1.砥石を水につける
私は30分くらい漬けますが、10分程度でもOKです。

私の使う砥石は表面が削れて曲面になっていますが、
この状態で使うことはオススメしません。
角度の保ったり調節したりする難易度が高くなるためです。
コンクリなどに擦り付けて削ると平らに戻せるので、
通常は使用後に削って平らにします。

私は持っていないが、
砥石を平らにする「面直し」のための道具もあります。
最近のは砥石にもなるようなので、
砥石を持っていないならこちらを購入しても良いかもしれません。
私はリングを彫っているおかげか
曲面において一定角度を保つということが多少できるので、
角度感覚の訓練のためにも曲面のまま研いでいます。
リングに一定の深さで直線の線彫りができるなら、
曲面での研ぎもやってみるとおもしろいですよ。
あと、平らに削るの面倒くさいというのももちろんありますね。
でも、角度がキツくなってきたのでそろそろ平らにした方が良いかもしれません。
2.角度を確かめる。
ここ間違えると全て台無しになるので丁寧にいきましょう。
まず、切れない状態では刃が摩耗して丸くなっています。
↓青い部分。刃が摩耗して丸くなっている図

基本は刃の元の角度を変えずに研いで鋭くします。
となると、元の角度を手や指で感じ取ることが重要になりますよね。
角度を確かめるためにまずは刃を砥石にぎゅっと押し付けてみましょう。
↓赤色部分を指で砥石に押し付け、元の角度をしっかり保持しましょう。

↓実際の押さえ方は両手でしっかり指4本ずつがオススメ


このようにしっかり押さえれば
これくらいの角度かな?というのがわかるはずです。
↓横から見た写真

しかし、実際に研ぐときは包丁を動かさなければなりません。
そして、動くときの抵抗のせいで、せっかく確かめた角度は変化してしまいします。
変わった時にすぐ元の角度に戻せるように
角度を変えて戻してを何回か繰り返すと感覚がつかめます。
↓押さえているのを後ろから撮ったもの。親指を上下に動かして角度を変えてみよう。

おかしな角度になったときに気づいて即応できれば失敗はほぼなくなります。
角度の把握と変化をしっかり意識できたら次の段階に進んでください。
なお、ここが一番大事なのでしっかり丁寧に感覚をつかんでください。
3.角度を維持したままゆっくり動かして研ぐ。
角度はしっかり確認できたでしょうか?
そうしたら、次はゆっくり動かして研いでいきましょう。
私は押し研ぎ派です。自分の近くから遠くへ押し出すように研ぎます。
引いて研ぐのが好きな方もいるので、慣れたらやってみると良いでしょう。
両手全体で包丁を抑えたままでも動かせますが、
指1,2本ほど柄に引っ掛けて研ぐと安定して良い感じです。
↓赤丸の部分、薬指と小指を柄に引っ掛けている。

↓先端の方は片手で柄を持ち、もう片方でしっかり押さえます。
どうでもいいですが、この写真はアゴと鎖骨でカメラを支えて撮りました。・・・疲れた

先端は跳ねやすいので、
ちょっと怖いですが刃の本当にすぐ近くを押さえてあげましょう。
最初は亀の歩みくらい本当にゆっくりで良いです。
ここで主眼を置くべきは研ぐことそのものではなく、
角度を維持することです。
動かせば力が別方向からかかり角度が変化してしまいます。
それを適切な力加減で押さえて角度を維持し、
変化してしまったら修正してください。
動かしきって端までいったら、
また戻って丁寧に角度を確かめてくださいね。
繰り返しますが、ここでは研ぐことは二の次です。
角度を維持し、変わってしまったら修正、
これがしっかりできるようになったら次の段階へ行きましょう。
4.少しだけ速く動かして研ぐ
いよいよ本格的に研ぎます。
といっても、少しずつ動かす速度を上げていくだけです。
ある程度速くしたところで
角度が変化の修正がしづらかったり維持が適当になってしまうはずです。
角度の維持が難しくなったら速度を落とし、
自分のちょうどよい速度で研いでいきましょう。
研いでいくと泥のような研ぎ汁がでてきます。
これは研磨剤の役割を果たしますので、研いでいる最中は洗い流さなくて良いです。
とはいえ特段に気を使う必要もなく、
包丁が渇いて研ぎにくくなってきたら水をかけても大丈夫です。

研ぐ順番は私は先っぽのほうからやっていますが、
別に根本からでもかまいません。
速さにかかわらず10回ほど研いだら、研ぐ場所を変えていきましょう。
研ぐ場所は少し重なるようにして全体を研いでいってください。
1年以上研いでいない包丁なら先から根本まで全体10回研ぐを4セット、
すなわち合計全体40回ほどは研がないと切れないかもしれません。
なお、月一で研ぐ場合は、全体2セット(20回)も研げば十分ですし、
週一ならもっと少なくて良いです。
なお両刃なら
全体10回4セット→全体裏表5回ずつを4セットというように
適宜回数を調整してやってみてください。
5.切れるかどうか確かめる。
研ぎの止め時って意外と難しいです。
研いでいるときはちゃんと切れるようになっているかは分かりませんからね。
私が思いつくのは3通りです。
一つ目は
親指の爪をほんの軽く撫でるように切ってみて
引っかかりがあるような感じだったらOKというもの。
ただ爪は傷つきます。
二つ目は私独自の方法なので一般的ではないですが、
刃を親指の腹で軽く横にはじいて切れそうな感じがするか確かめるもの。
指紋に刃をひっかける感覚が近いかも。

切れなくなっている包丁は刃が丸くなっており、若干滑らかな触覚です。
切れる刃物は軽く触っただけで
引っかかりがあり、痛覚を刺激し、身の内にスッと入り込んできそうな怖気を感じます。
あるいは、指紋が引っかかって削られるような感じですかね。
私的には簡単に確かめられるのでオススメです。
ですが、タガネづくりの経験が多分に生かされた結果できるようになっていた気もしますし、
怪我しても責任は取れません。
やってみるにしても、本当にかる~くにしてくださいね。
三つ目は素直に何か切ってみること。
野菜の捨てるところなど、
普段切るようなものを適当に切ってみると違いが一番わかりやすいです。
ただ順番を入れ替えて、「手順6のバリ取り」を先にやった方が良いでしょう。
バリが変な風に取れたり曲がったりすると切れ味に影響します。
そのため、もし追加で研ぐ必要がでてくると
バリ取りをもう一度やらなければいけないので面倒だったりします。
またそのまま試すと切ったものやまな板が汚れますし、
包丁を洗ったら洗ったでもう一度研ぐ必要があったときに二度手間になります。
と、色々面倒ですが、一番安全確実なのでオススメではあります。
4つ目 目視
ちょっと難しいです。
前に人に説明したことがあるのですが、よくわからないとのことでした。
刃そのものが研げていない場合、
オモテ面からよく見ると刃が研ぐ前の色になっています。
とはいえ刃付近の0.1㎜とかなので見えにくいです。
他にも刃そのものに光を当てて
柔らかく光ったり光の線が太かったら研げていない、とか
裏面にバリが出ているかどうか、とか
そんなところをよく見ています。
↓研ぎの過程です。

赤い部分は砥石が当たって研げている部分。
絵の真ん中で研ぎの途中だと、摩耗して丸くなった青い部分がまだ残っています。
青い摩耗した部分は砥石が当たっていないため、色もほぼ研ぐ前のまま。
つまり、研げていない暗い色の部分が刃付近にあれば
まだ研ぎは不十分といえるわけです。
↓一回研いだだけ。
赤矢印の区間に注目すると刃付近は地の鉄の色が出ておらず、研げていないのが分かる。

↓3回くらい研いだもの。刃付近0.1㎜以下だが、暗い色の部分が残っている。
よってこれもまだ研げていない。

上の2枚の写真はアップにしているため、見やすいです。
実際はもう少し見にくいです。
実際に目視してみてわからなかったら別の方法にしましょう。
なお、刃そのものを照らして光り方で判断するということもやってますが、
こちらは上手に写真が取れませんでした。

赤矢印のところが光り方が違うんですが、分かります?
・・・わからないですよね。
これはさっきと違って実際に目視した方がわかりやすいです。
刃が丸くなっている所は柔らかに光り、
欠けている所はキラっと大きめに光ります。
しっかり研げている所は光を反射する面積が無いので、あまり光りません。
先ほどもちらっと書きましたが、バリが出ているかどうかで判断する場合もあります。
バリとは
刃にくっついたままになっている金属クズで、キザギザしております。
オモテ面を研いだ後に裏面で発見できます。
一応刃に砥石が当たっている証明にはなるのですが、
バリがあるからといって必ずしも切れるわけではないという・・・
なんなら押し研ぎで丁度良い加減で研ぎ終わればあまりバリがでないことも多いという・・・
意外とアテにならない指標ではあります。
これについては最後にちょっと書いておきます。
6.逆側のバリ取り
片刃では先にも説明したバリ取りをする必要があります。
今回は押して研いでいるので大きなバリは出にくいですが、
目に見えなくともわずかに出ていることが多いです。
なお両刃でもバリが出ていることはあるので、見つけたらしっかり取っておきましょう。
バリの出る片刃の裏面は通常ほぼ平らです。
そのため、バリ取りは裏面を砥石に密着させて
刃を砥石に擦り付けるような感じで動かせばOKです。
刃に付いたゴミを砥石に擦り付ける感覚で、
研ぐよりも押さえる力は弱くします。
動かす回数も精々2,3回といったところ。
バリが取れていれば1回でも構いません。
↓私は親指で押さえて引いて動かしバリ取りしております。
実は裏すきが浅くなっている関係で少し両刃気味にしており、
裏面の研ぎにしては少し角度が大きいです。

このバリ取りは裏面の研ぎも兼ねております。
逆に言えば、片刃の裏面の研ぎはこれくらいささやかで良いのです。
包丁には「裏すき」と呼ばれるくぼみがあり、
裏面をしっかり研ぐとこのくぼみがなくなってしまいます。
そのため、バリ取りと兼ねるくらいで良いということですね。
もちろんオモテ面がしっかり研げていればちゃんと切れます。
研ぎ終わったら包丁や砥石はしっかり洗いましょう。
包丁は錆びないように水分をふき取り、
砥石は自然乾燥させます。
生乾きでしまうと砥石にカビが生えることもあるので、
くれぐれもご注意ください。
よくある失敗パターン。角度が不安定だと刃が丸くなる
先ほどバリが出ていても切れないパターンがあると書きました。
↓研いでいる最中に角度が大きくなってしまうと、
むしろ刃は丸くなってしまうという絵です。

鋭い部分を角度大きくしながら削っているのですから丸くなるのは当然です。
角度的には、木材の角を落とす時と同じようなことをしています。
つまり残念ながら、逆効果です。
このようにどれだけ頑張って研いでも包丁が切れるどころかナマクラになる場合、
多くは角度をしっかり維持できていないことが原因です。
なお、このパターンでも砥石が刃に当たっているのでバリはでます。
前述したバリは出ているけど切れないのはコレです。
刃を削って丸くしているので、バリがでるのです。
心当たりのある方は、
しっかり押さえて角度を確かめること
を丁寧にやれば研げるようになるハズです。
ですので、失敗してもめげずに参りましょう。
最後に、使用後の砥石は洗ってからしっかり乾かしましょう。
私は前に半乾きでしまったら、カビが生えました。
次回からはさすがにドリル刃を研いでいけると思います。・・・たぶん。
それでは。