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手彫り工房ブログ

手彫り工房のオフィシャルブログです。金属彫ってます。彫ってます。

覆輪留めをしよう 彫金アクセサリー教室

2021
03
こんにちは。

こちらは手彫り工房の彫金教室です。
バックナンバーはコチラから


ここまで長かった。
さぁ、いよいよ覆輪留めの時間です。

今回使う道具は前に作ったならしタガネとオタフク槌、
リングを固定するためのモノです。

指輪の固定


彫るにあたってリングを固定する必要があります。
覆輪を倒す2

私が使っているのはヒートクレイと半球バイス(彫刻台)の組み合わせです。
柔らかくなったヒートクレイを指輪に通してバイスで挟んで固定します。
石留め中心にやるならリングホルダー(またの名をリングクランプ)
を使っていくのも良いですね。
固定に関してはこちら
ヒートクレイは↓のように平らにするとバイスで挟みやすいです。
覆輪を倒す1
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以前の記事「彫るための固定(簡易版)」を使う手もあります。
ヒートクレイを通した指輪を土台のヒートクレイに引っ付けるだけです。
外す時は土台ごと鍋で煮ないといけないので、
そこがすこし面倒くさい所です。

リングクランプ付き彫刻台というのも見つけました。
ただ、使ったことは無いので、
使えるかどうかは分からない所です。
リングの宝石の留めだけやるならアリなのかもしれません。
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覆輪の倒し方



叩く時に石が飛ぶので、
タガネを持つ手の中指か薬指で石を押さえます。
中指の場合は親指人差し指の2本でタガネを持つことになってしまいますが、
石を押さえやすいので私は中指で抑えています。
覆輪を倒す3
中指で宝石を押さえつつタガネを持つ手全体を支え、タガネはわずかに浮かして滑らかに動くようにします。
覆輪を倒す4
後はタガネをオタフク槌で叩けば覆輪が倒れます。

叩く順番は対角線上です。
上を叩いたら次は下、右を叩いたら左側を叩くといった感じです。
上下→左右→右上左下→左上右下といったように8方向の対角線です。
なお、別に左右から始めても構いません。
対角線上に叩いていくことが大切です。

私は最初に叩くところをロウ付けした部分にすることにしています。
後の方にすると歪みがきてしまう場合があるので、
強度の弱い所は念のため先に叩いているのです。
覆輪叩いて倒す1
叩く順番①の下の赤線がロウ付けしたところだとすると
次に叩くのは対角線上の②になりますね。

叩き方の詳細


基本的に強く叩いてはいけません。
軽く叩いて少しずつ覆輪を倒していきます。
上下→左右→・・・・というのを3、4周くらいして倒しきるイメージです。
強く叩きすぎると
歪んだり修正のきかない凹みができたり覆輪が破れたりします。

叩き方は先にも少し触れましたが・・・
1:ならしタガネを紙一枚分くらい軽く浮かせて
  オタフク槌で軽く速めに叩きます。
2:一か所を叩き続けず少しずつ動かします。
  上下・・・の下りで書いたように8方向なので、
  だいたい8分の1くらい動かしつつ叩きます。
といった感じです。

覆輪倒しの3段階


上下・・・というのを3周ほど繰り返すと書きましたが、
正確には3段階あると言った方が正しいでしょう。
そして、それぞれの段階で意識することが異なります。

一段階目は一周軽く叩きつつ、覆輪を少し倒すことを目標にしましょう。
全く倒せていない状態と少し倒せている状態では、
後者の方が石がとびにくく傾斜もついていて圧倒的に留めやすいです。
↓一段階目叩き終わり。歪みがある。
覆輪を倒す4-5

2段階目は歪みを直しつつ倒していきます。
1段階目叩くと分かると思いますが、
きれいな円ではなく多少歪みやガタつきがでます。
覆輪叩いて倒す2
この歪みガタつきを直すために
あまり叩かなくてよい所と多めに叩いた方が良い所
がでてきます。
覆輪叩いて倒す3
叩くべきところを叩いてきれいな円に近づけるのが
2段階目に意識することです。
そして、宝石が石枠から取り出せないけど、指で触ると多少は動く
くらいのところまで覆輪を倒しましょう。

なお2段階目では対角線をあまり意識しなくて良いです。
なんなら叩くべきところの対角線が
あまり叩かなくて良い所の場合もありますからね。

まとめると、
1:一段階目で生じた歪みを直す。
2:宝石が石枠から取りだせなくなり指で多少動く、くらいまで覆輪を倒す。
これが2段階目でやることですね。

↓2段階目叩き終わり。赤矢印の所に隙間がある。
覆輪を倒す5

3段階目は詰めの段階です。
指で触っても動かなくなるまで叩いてしっかりと留めます。
しっかりと留めて動かなくするには、
宝石と覆輪の隙間をなくさなければなりません。
そして隙間をしっかりと埋めるには、
宝石のすぐ近くを叩く必要があります。
↓このくらい近く
覆輪を倒す6

宝石のすぐ近くを叩くということは、
その分宝石を傷つけやすいということです。
タガネが当たってしまうのはもちろんのこと
覆輪を強く叩きすぎて宝石を圧迫して最悪割ってしまうこともあり得ます。
またこの圧迫という観点から、
3段階目も対角線を意識して叩くとよいでしょう。

↓叩いて隙間がなくなり、宝石が動かなくなればOKです。
覆輪を倒す7


どれくらい叩いたか


さて、叩いた部分の研磨などはありますが、
3段階目が終われば宝石は留まったといえます。
つまり、覆輪留めができるようになった言えるでしょう。
おめでとうございます。

ところで、覆輪留めはどれだけ叩き、
どれだけ覆輪を倒したかによって見た目が変わってきます。
覆輪叩いて倒す4
皆さんの覆輪留めはどちらが近かったですか?
前にも書いたように、
宝石と覆輪の隙間が大きいほど
たくさん叩いてたくさん覆輪を倒さないといけません。
隙間が大きくたくさん覆輪を倒すと、
図の左側のように角度が水平に近くなります。
逆に隙間が小さいほど
覆輪を少し倒すだけで宝石が留まり、
右側のように角度が垂直に近くなります。

どちらが良いというわけではありません。
ただ、デザイン的に印象が変わってくるので、
狙って作れるようになるとより良いかなと思います。

ちなみに今回の例として作ったリングは・・・
覆輪を倒す8
かなり水平。かなりたくさん倒しました。
宝石と覆輪の隙間の例を示すために
すこし石枠を大きめに作りましたからね。無理からぬことです。
なお、これより倒さなければならなくなると
叩き過ぎで覆輪が壊れる可能性が高いです。

宝石と覆輪の隙間は
覆輪留めの成否やできあがりの見た目において
とても大切な要素なんですよね。

次回は仕上げの仕上げ。
覆輪で叩いたところをキレイにしていきます。

それでは。