Engrave with!!
手彫り工房ブログ

手彫り工房のオフィシャルブログです。金属彫ってます。彫ってます。

ヤスリ掛けは「不安定な感覚」こそ頼りにしよう。

2019
20
こんにちは。

こちらは彫金教室です。
今回はヤスリ掛けの「感覚」についてです。

前置きが長めなので、
ちょっと面倒な場合は、「不安定な感覚」こそ頼りにしよう、までスクロール。
さらに面倒な場合は、一番最後の「ヤスリ掛け まとめ」なら3行です。


ヤスリの持ち方(タガネを作ろう1 後半部分)

ヤスリで削る(ロウ付け下準備 後半)
を読んでもらえると
これからの話がわかりやすいので是非。

特に「ヤスリで削る」では「触覚を無視して」
と書いています。

その理由さえ分かれば、
使えなかった感覚・触覚が頼れるようになって、より良いヤスリ掛けができますよ~
というのが今回の内容です。

ヤスリ掛けの理想と現実


例えば、下図のように線の先端、尖った部分を平らにヤスリ掛けするとしましょう。
ヤスリの感覚1

理想は(あくまで理想)
・尖った部分から
・目標とする赤の点線まで
・平行に面を削っていくこと
です。
ヤスリの感覚2理想

しかし、現実はなかなか上手くいきません。
正しい持ち方をし、
手首を動かさずにヒジや肩を動かし、
線をキッチリと持って固定し、
角度をしっかりと意識したとしても、
ズレは生じます。

そして、ズレが生じたままヤスリ掛けしてしまうのが現実です。
ヤスリの感覚3現実
2番目の絵の青線、ちょっと傾いてますよね。
それをそのまま削って3番目の絵になります。
そしてここで、「アレ?傾いているぞおかしいな」となるのです。

その後、修正しようとして4番目以降と続きます。
そして6番目では赤い点線さえ超えて逆に傾くのです。

本当にこんなことある?と思われるかもしれませんが、
あります。(というか私がやりました(笑))

ヤスリ掛けしている最中って、この青線のような傾きはほぼ見えません。
ヤスリ掛け見えない1
↑ヤスリ掛けしている最中
↓削っている線の先端
ヤスリ掛け見えない2
このように手とヤスリそのものが影になって
どこがどれくらい削れているかは見えません。

だからこそ、
慣れていないうちは特に小まめに手を止めて
わざわざ角度を見るのが良いのです。


安定を疑う


先ほどの「現実」の図のように、誤った角度で削り続けるのはなぜか。
見えていないだけで、削り続けてしまうのか?
私はもう一つ原因があると考えます。

それは、ヤスリ掛けするときの安定感です。

ヤスリ掛け最中は削っている部分が見えないので、
つい触覚での安定感を求めてしまいがちになります。

それでは安定感とは何か?
それはすなわち「ヤスリと線との接する面の広さ」です。


接する面が広い

ヤスリがグラつかず削りやすい

安定感がある

誤った角度のまま削り続ける

というサイクルです。
そもそも、頭の中では「理想」通りに平行に削っています。
理想通りなら接する面が広いので安定しているのです。
でも、「現実」は違います。



不安定な感覚こそを頼りにしよう


では、「現実」を見すえた上でヤスリ掛けしましょう。
といっても話は簡単。一番尖っているところを削り続けるだけです。
ヤスリの感覚4実際
ハナから平行に削れていない前提で、
赤い点のところにヤスリを当てて削っていきます。

1番目の絵はこれまでと同じ。
2番目の絵は尖っている赤い点のところにヤスリを当てます。

2番目の赤点を少し削って安定してきたら3番目。
また一番尖っている赤点を削っていきます。

尖っているところに当たるため、
ヤスリはいつもグラつき不安定な感覚で、削りにくいでしょう。

でも、不安定な感覚こそ尖っているところにヤスリが当たっている証です。
ヤスリ掛けは「不安定な感覚」こそを頼りにしましょう。

尖っているところを削っていけばほぼ平らになります。
ほぼ平らになったら、あとはもう大丈夫。そのまま削るだけです。


ヤスリ掛け まとめ


あまり手首を動かさずヒジと肩を動かす。
基本は手を止めて目で見て。
触覚は尖っているところを削るため「不安定な感覚」こそ頼りに。

まとめれば3行!
今回の内容は3つ目の1行のみ!

やっぱり感覚の理由と説明って難しいですね。

彫金教室では様々な技術を紹介しております。
よろしければのぞいて行ってください。

それでは。