Engrave with!!
手彫り工房ブログ

手彫り工房のオフィシャルブログです。金属彫ってます。彫ってます。

銅の共付け研究 前編

2018
20
こんにちは。

近々緋色銅リングのリニューアルをする関係で、
銅の共付けの研究をしっかりやる必要に迫られていました。
ロウを使わずに、銅と銅をくっつけたいのです。
ロウとロウ付けに関しての記事はコチラ

目標は、確実にくっつける、かつ火ムラができるだけ少なく、です。


なぜ緋色銅で共付けが必要なのか?


そもそも、なぜ緋色銅で共付けが必要なのか?
緋色銅についての記事はコチラ
それは、緋色銅は銅が溶ける寸前まで熱っして作るためです。

ロウとは溶ける温度が低いものです。
当然、溶ける寸前まで熱すればロウは溶けだしてしまいます。
溶けないくらいの低い温度でもできないことはないかもしれませんが、
色合いがかなり変わってしまいます。

また、ロウは純銅ではないため、緋色銅にしたときロウ付け部分の色が変わってしまいます。

よって、出来上がりの美しさを求めるなら、共付けをしなければならないのです。

そもそも共付けとは


銅の共付けとは、ロウを使わずに銅と銅をくっつけることです。
溶接に近いというか、そもそも共付溶接という言葉があります。
彫金では、銅の共付けの際、くっつける場所にロウと同じ感覚で銅の欠片を置くことが多いのですが・・・。
銅共付け (8)


銅の欠片をのせるくらいなら


継ぎ目に銅の欠片をのせる。
そしてこの欠片を溶かして継ぎ目に流し、くっつける。
これが基本のようです。(独学なので確信がもてない)

しかし、くっつけたい継ぎ目の上に銅の欠片をのせると1つ不都合が生じます。
それは、継ぎ目自体の温度が上がりにくいこと。
欠片が上に乗っていて直接火が当たらないので、継ぎ目の周囲の方が温度が高くなります。

ロウ付けなら多少周囲の方が高くても大丈夫なんです。
なぜなら、フラックスと毛細管現象の効果が高いから。

しかし、銅の欠片はそうもいきません。
銅の欠片が溶けるころには周辺の母材も溶け始めますし、
そのタイミングでは銅の欠片は完全に液体になりきっておらず、粘性も高い。
粘性が高いということは、毛細管現象の効果が低い。
また、フラックスの利きもロウと比べればかなり悪いです。

つまり、フラックスも毛細管現象も効果が低い以上、ロウ付けと同じようにやっていてはだめだということです。
銅の欠片をただ乗せるくらいなら、むしろ何もない方がやりやすいかもしれません。
↓欠片乗せ成功パターン。ちょっと段差がでてしまう。
銅共付け (11)
しかも、中心の方がくっついていないこともありました。

また、タガネで彫ったときにでる糸状の銅を使ってもみましたが、
溶ける所まではよくても、そこから流れてくれませんでした。
もうちょっとやれば上手にできそうな気もしましたので、
そのやり方も研究したいですね。
あるいは、銅箔くらいとても薄い銅を巻き付けてやってみるのもアリかもしれません。
まだ色々とルートはありそうです。

圧着と力加減


共付けのときは指輪全体が熱せられ、なまされ、やわらかくなります。
すると、くっつけたい継ぎ目にかかっていた力が弱くなります。
最悪、スキマが開くこともあります。

継ぎ目の部分に力がかかっていないとくっつきにくくなるので、
幅広めのピンセットで保持しながら力を加えます。

しかし、熱されて柔らかくなっている銅。
いや、もはやモロクなっているといってもよいでしょう。
押さえる力が強すぎると折れます。
銅共付け 熱でもろくなり折れる


逆に、力を抜きすぎると下に落とします。
↓焦げ跡
銅共付け 焦げ跡 (1)


そのため、力をかけやすいよう、折れにくいようにリングの形を扁平に変えて熱します。
折れない程度に力を加えて保持し続ければ、銅の欠片を使わずとも圧着できます。
銅共付け 保持


タブー?ホウ砂の結晶をのせて


銀のロウ付けでは、ホウ砂の結晶をのせることは基本的には良くありません。
なぜなら、ロウだけでなく銀そのものも溶けやすくなり、
火ムラができやすくなってしまうのです。
(銀ロウでも「基本」じゃないこともある↓
例:冬場でフラックス濃度が下がったときは、結晶乗せも一つの選択肢)

しかし、この銅の共付けに関しては溶けすぎるくらいがちょうどいいのです。

そのため、私はホウ砂の結晶をのせて共付けしました。
熱するとき飛ばないように気を付ければ、圧倒的に銅の共付けはやりやすくなりました。
継ぎ目の一か所が溶け始めると連鎖的に溶け始めたり、わずかに溶けたものが継ぎ目に入ったりしてくれて
つながりやすくなりましたね。

なによりも、表面だけつながっているというのがほとんどなくなったのが大きいです。
表面だけつながっている場合は、ぱっと見は成功ですが、ちょっと力を加えると外れます。
うっかり成功したと見誤ったまま進めるとやり直しになるので、単純な失敗よりも始末が悪いのです。

↓乗せる結晶は、親指2本の爪で挟んで砕くのがやりやすい。ただし、爪はちょっぴり傷つきます。
銅共付け フラックス (1)


あと、フラックスでいえば銅専用フラックスを試してみるのも良いかと思います。
酸化を防止する成分が入っているため、効果がある可能性はあります。
ただ、私は個人的に銅専用フラックスの使用感が好きではなかったので、
ホウ砂を使いました。



以上、銅の共付け研究前編でした。
説明というよりはほとんど列挙しただけですが、
この記事は私の覚書に近いものなので、ご容赦ください。

銅の共付け研究 後編はコチラ

それでは。