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手彫り工房ブログ

手彫り工房のオフィシャルブログです。金属彫ってます。彫ってます。

【彫金】その細線は輝いているか?

2016
23
こんにちは。

毛彫りの細い線がウネウネとカーブしているのが好きです。
規則正しく交差したり、自由にクネっていると、角度を変えた時にツゥーっと水が伝うように光を反射するのがイイです。
急なカーブを彫るためにググっとタガネを倒した時に伝わる手ごたえや体ごと捻ったときに腰から手までがワンセットになった一体感も好きです。

・・・何言っているかわからないかと思いますが、
  細線に輝いてほしいということが分かってもらえるとうれしいです。

その細線は輝いているか?


彫金で細い線というのは、なかなか目立ってくれません。
それは、銀に彫れば銀色の線、金に彫れば金色の線、銅に彫れば銅色の線になるためです。

つまり、ただ一本か2本の細い線、というのは白地の紙に白の線を引くようなものなのです。

目立たないのです。地味なのです。
細線を輝かせるには、ちょっとした工夫が必要なのです。



細い線を目立たせるためにまず思いつくのは3つの方法です。

1・深く大きく彫る
2.あるいは細い線を集めたりたくさん彫る
3.緩急をつける

1番は確かに目立つのですが、毛彫りの細線ならではの繊細な感じがなくなってしまいます。
2番はキラキラと輝いてきれいですが、線のキレイさというより全体の模様としての(テクスチャとしての)キレイさですね。
3番の緩急というのはカーブと線の太さで強弱をつけていくという感じです。
 この緩急は毛彫りよりも片切タガネの得意分野ですが、毛彫りの細線でも十分にイケます。
シルバーピンキーリング (4)
↑深く彫った細線を集めたことで輝かせたリング。1,2番の合わせ技。
 ちなみに、2,3番の合わせ技でナミクサ模様というのもあります。

輝かせるために、輝きを消す。


細線を輝かせるために、ちょっと毛色の違う方法を使うこともあります。
それは、地金の輝きを消すことです。

例えば、荒しといってハンマーで叩いたり砂を落として金属の光沢をあえて消すことがあります。
光沢を消したところに線を彫ると、彫られた線の部分だけが光って目立ちます。
細線が輝くのです!

このように線を輝かせるために他の部分の輝きを消す、という逆転の発想がこの方法です。
荒しの他にも、銀ならば黒く染める方法もありますね。


細線ひとつとっても奥深い。
これからも精進せねば。

それでは。